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【次号予告】第5次「精神医療」第15号

特集 スメディアと精神医療

[責任編集] 大塚淳子・古屋龍太

 

 本誌では2001年に「メディアと精神科医~メディアゲームと情報消費の病理~」という特集(第4次第24号)を組んだ。当時の主要なメディアであったテレビや新聞等の報道場面に露出する、コメンテーターとしての精神科医の虚実に焦点化している。

 当該特集から20数年が経過し、インターネットの急速な発達とともに、メディア媒体と情報取得の方法が激変した時代に我々は過ごしている。テレビ・新聞等のオールド・マスメディアは後景に退き、個人の発信するSNS等が情報流通の主役になってきている。精神医療や精神障害に関する情報も、多様なメディア媒体によって発信され取得される時代となった。

 かつては、精神医療とメディアと聞けば、何かしらの事件報道等に精神疾患や精神障害が絡むとしたセンセーショナルなものや、ネガティブキャンペーンにつながるようなものを思い浮かべた。しかし、近年はマスメディアの精神医療の取り上げ方も大きく変化した。かつてのスキャンダラスな犯罪報道は少なくなり、精神医療の内実を問う報道が目立つようになった。精神科病院における不祥事件を深堀する報道や、長期取材に基づいた日本特有の法制度による精神医療の「闇」を問う真摯な報道が増えている。今日マスメディアは、見えないバリアに閉ざされがちであった精神科病院の実態を国民に知らせ、精神保健医療従事者に対しては警鐘を鳴らし、自己点検を求める役割を担っている。こうした報道に、地道に真摯に臨床実践に取り組む医療従事者からは、未改革な精神医療の構造的問題を世論に訴える力として歓迎する声がある一方で、業界全体が同じ体とみなされると抗う声もある。そして、メディア側からは、精神医療従事者たちの総じて冷めた反応への驚きの声を聞く。

 本特集では、報道場面に従事するジャーナリストを執筆陣に迎え、マスメディアの目に移った精神医療とそこに従事する専門職の姿、メディアの立場で考える情報発信の使命、精神医療改革に資するメディアの活用方法等について検討する。メディアを通して精神医療の現状や課題について発信する側の立場とメディア情報を受け取る側の立場とから、マスメディアとの向き合い方について考えてみたい。

 

≪目次≫【巻頭言】大塚淳子/【特集】[座談会]メディアを通した精神医療改革への取り組み…青山浩平+堀合悠一郎+木原育子+大塚淳子+古屋龍太/[論文]原昌平+市川亨+山田奈緒+関口暁雄+月崎時央+高岡健/【連載・コラム等】[視点]「優生保護法について~精神神経学会の優生保護法報告書・声明を受けて~」藤井克徳/[連載コラム]「精神科医をやめてみました〈6〉」香山リカ/[連載]「バンダのバリエーション〈15〉」 塚本千秋/「世界の果ての鏡〈5〉」 太田裕一/[リレー連載]「同人のいる風景〈1〉」熊谷彰人/[書評]『精神医療の専門性~治すとは異なるいくつかの試み』竹端寛/[紹介]『かごの鳥~奪われた40年の人生を懸けた精神医療国家賠償請求訴訟』長谷諭/【投稿】「解離性同一性障害の心理療法~人格の統合を目指さないことの治療的意義」原田雅史/【編集後記】古屋龍太


2024年10月20日刊行予定 ISBN9784904110393  (税込1,870円)